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歯周病を放置して歯科矯正を始めると危険?歯が抜けるリスクや後悔を防ぐために知っておきたい治療前の重要

「歯並びをきれいにしたい」「口元を整えたい」と考えて歯科矯正を希望される方は年々増えています。近年では大人になってから矯正治療を始める方も多く、見た目だけではなく、噛み合わせ改善や健康維持を目的として矯正を検討されるケースも少なくありません。

しかし、歯科矯正を始める前に必ず確認しなければならない大切な問題があります。それが「歯周病」です。

歯周病は、日本人の成人の多くがかかっているといわれる非常に身近な病気です。初期段階ではほとんど症状がないため、自分では気づかないまま進行していることも珍しくありません。そして、歯周病が進行した状態で歯科矯正を行うと、歯を支える骨や歯ぐきに大きな負担がかかり、場合によっては歯を失うリスクまで高まることがあります。

実際に歯科医院では、
「矯正を始めたら歯がグラグラしてきた」
「歯ぐきが下がってしまった」
「矯正中に歯周病が悪化した」
「せっかく矯正したのに歯が抜けそうになった」
といったトラブルが起こることがあります。

もちろん、すべての方に問題が起こるわけではありません。しかし、歯周病を十分に治療せずに矯正を始めることは、決して軽視できないリスクを伴います。

今回は、歯周病の治療をしないまま歯科矯正を行う危険性について、患者様にもわかりやすく詳しく解説します。これから矯正を考えている方や、現在歯ぐきに不安がある方は、ぜひ最後までご覧ください。

まず知っておきたい「歯周病」とは何か

歯周病とは、歯を支えている歯ぐきや骨が炎症によって破壊される病気です。
原因の多くは、歯と歯ぐきの境目にたまる細菌の塊「プラーク(歯垢)」です。プラークの中には大量の細菌が存在しており、これらが炎症を引き起こします。

歯周病は大きく分けると、
・歯肉炎
・歯周炎
の2段階があります。
歯肉炎は比較的初期の状態で、歯ぐきが赤く腫れたり、歯磨き時に出血したりします。この段階で適切なケアを行えば改善が期待できます。
しかし、そのまま放置すると炎症が深部へ進行し、歯を支えている骨が溶け始めます。これが歯周炎です。
歯周炎が進行すると、
・歯ぐきが下がる
・口臭が強くなる
・歯が長く見える
・歯が揺れる
・噛みにくくなる
・最終的に歯が抜ける
といった症状が現れます。

特に注意したいのは、歯周病は「静かに進行する病気」であることです。
痛みが少ないため、自覚症状がないまま中等度〜重度に進行しているケースも珍しくありません。

歯科矯正で歯が動く仕組み
歯科矯正では、ワイヤーやマウスピースなどの装置を使って歯に力をかけ、少しずつ歯を移動させます。
歯は単純に押されて動くわけではありません。
歯の周囲には「歯槽骨(しそうこつ)」という骨があります。矯正力が加わると、
・押された側の骨が吸収される
・反対側に新しい骨が作られる
という骨の代謝が起こります。
この骨のリモデリングによって、歯は安全に少しずつ移動していきます。

つまり、矯正治療は「健康な骨」と「健康な歯ぐき」があることを前提として行われる治療なのです。

歯周病がある状態で矯正すると何が危険なのか

歯周病によって骨が弱くなっている状態で矯正を行うと、通常以上に大きな負担がかかります。

ここからは具体的なリスクについて詳しく説明します。

歯を支える骨がさらに減る可能性がある

歯周病では、すでに歯槽骨が溶けています。
そこへ矯正力が加わると、骨の吸収がさらに進行してしまうことがあります。
本来、健康な骨であれば適切なバランスで骨の吸収と再生が行われます。しかし、炎症がある状態では正常な骨代謝が妨げられ、骨の破壊が優位になる場合があります。
結果として、
・歯を支える骨がさらに減少する
・歯の安定性が悪化する
・歯が長持ちしなくなる
といった問題につながります。

歯がグラグラになる
歯周病で骨が減少すると、歯を支える力が弱くなります。
その状態で矯正によって歯を動かすと、歯の動揺が強くなることがあります。
通常の矯正でも一時的な揺れは起こりますが、歯周病がある場合は過度に揺れてしまい、
「食事がしにくい」
「前歯で噛めない」
「歯が抜けそうで怖い」
という状態になることもあります。
特に重度歯周病では、矯正そのものが適応外になるケースもあります。

歯ぐきが下がる(歯肉退縮)
歯周病がある方は、もともと歯ぐきが弱っていることが多くあります。
そこへ矯正治療による負荷が加わると、歯ぐきがさらに下がることがあります。
歯ぐきが下がると、
・歯が長く見える
・見た目が悪くなる
・知覚過敏が起こる
・根面むし歯のリスクが高まる
などの問題が起こります。
特に前歯部分では見た目への影響が大きく、せっかく歯並びを整えても審美的な満足度が低下する可能性があります。

矯正中に歯周病が急激に悪化する
矯正装置が入ると、歯磨きが難しくなります。
ワイヤー矯正では特にプラークがたまりやすくなるため、清掃不良が続くと歯周病菌が増殖しやすくなります。
その結果、
・歯ぐきの腫れ
・出血
・口臭
・骨吸収の進行
などが起こりやすくなります。
もともと歯周病がある方では、炎症が急速に悪化するケースもあります。

歯が抜けるリスクが高まる
最も深刻な問題は「歯の喪失」です。
重度歯周病の状態で無理に矯正を進めると、歯を支える骨が耐えきれず、最終的に抜歯が必要になることがあります。
特に、
・もともと動揺が強い歯
・骨吸収が大きい歯
・噛み合わせ負担が強い歯
では注意が必要です。
「歯並びをきれいにしたい」という目的で始めた矯正が、逆に歯を失う結果につながってしまうこともあるため、慎重な診断が欠かせません。

なぜ歯周病治療を先に行う必要があるのか
矯正治療を安全に行うためには、まず歯周病の炎症をコントロールする必要があります。
歯周病治療によって、
・歯ぐきの炎症を改善する
・細菌数を減らす
・歯周ポケットを浅くする
・骨への負担を軽減する
ことが可能になります。
歯周病が安定した状態になってから矯正を行うことで、リスクを大幅に減らすことができます。

歯周病があっても矯正できるケースはある?
「歯周病があると矯正は絶対できないのですか?」
この質問をよくいただきます。
結論から言うと、歯周病があっても適切な治療と管理を行えば矯正できる場合があります。
重要なのは、
・現在の歯周病の進行度
・骨の残存量
・清掃状態
・患者様のセルフケア意識
・定期管理が可能かどうか
などを総合的に評価することです。
軽度〜中等度の歯周病で、しっかり炎症がコントロールできていれば、矯正治療が可能なこともあります。

一方で、重度歯周病では慎重な判断が必要になります。

歯周病治療と矯正を連携して行う重要性
最近では、歯周病専門医と矯正歯科医が連携して治療を進めるケースも増えています。
これは非常に重要です。
歯周病と矯正は密接に関係しているため、
・歯周病の安定確認
・適切な矯正力の設定
・定期的な歯周検査
・クリーニング管理
を並行して行う必要があります。
歯周病管理を行いながら矯正を進めることで、より安全性の高い治療が可能になります。

矯正前に必ず受けたい検査
安全な矯正治療のためには、事前検査が非常に重要です。
特に以下の検査は欠かせません。

歯周ポケット検査
歯ぐきの深さを測定し、炎症の有無を確認します。
出血の有無も重要な判断材料になります。

レントゲン検査
骨の状態を確認します。
どの程度骨吸収が進んでいるかを把握できます。

口腔内写真
歯ぐきの状態や歯列全体を記録します。

噛み合わせ検査
一部の歯に過剰な力がかかっていないか確認します。

CT検査
必要に応じて三次元的に骨量を評価します。

歯周病がある方の矯正で特に注意したいポイント

歯周病がある方の矯正では、通常以上に丁寧な管理が必要です。

無理な歯の移動を避ける
大きな移動や急速な移動は、骨への負担を増加させます。
弱い力で慎重に動かすことが重要です。

清掃管理を徹底する
矯正中はプラークがたまりやすくなります。
そのため、
・歯間ブラシ
・タフトブラシ
・デンタルフロス
などを活用し、通常以上に丁寧なケアが必要です。

定期的なメインテナンスを受ける
矯正中でも定期的に歯周病管理を受ける必要があります。
通常より短い間隔でクリーニングを行うケースもあります。

禁煙する
喫煙は歯周病悪化の大きなリスクです。
さらに、矯正中の治癒にも悪影響を及ぼします。
安全な治療のためには禁煙が推奨されます。

歯周病とマウスピース矯正の関係
近年人気のマウスピース矯正は、ワイヤー矯正より歯磨きしやすいというメリットがあります。
取り外し可能なため、清掃性が高く、歯周病リスク軽減につながる場合もあります。
しかし、
・装着時間不足
・マウスピース清掃不良
・自己管理不足
などがあると、逆にトラブルにつながることもあります。
また、歯周病の進行度によっては、マウスピース矯正でも注意が必要です。

自己判断で矯正を始める危険性
最近では、低価格矯正やオンライン主体の矯正サービスも増えています。
しかし、十分な歯周病検査を行わずに矯正を開始することには大きな危険があります。
見た目だけでは歯周病の進行度はわかりません。
必ず歯科医院で精密検査を受け、歯周状態を確認することが重要です。

こんな症状がある方は要注意
以下の症状がある方は、歯周病の可能性があります。
・歯磨きで血が出る
・口臭が気になる
・歯ぐきが下がった
・歯が長く見える
・歯が揺れる
・歯ぐきが腫れる
・朝起きると口の中がネバネバする
・食べ物が詰まりやすい
これらがある場合は、矯正前に歯周病検査を受けることをおすすめします。

歯周病を治療してから矯正するメリット
歯周病治療を先に行うことで、矯正の安全性だけでなく、治療結果そのものも良くなる可能性があります。
具体的には、
・歯が安定しやすい
・後戻りリスク軽減
・歯ぐきの見た目改善
・口臭改善
・長期的に歯を守れる
・噛み合わせが安定する
など、多くのメリットがあります。
歯並びだけではなく、口腔全体の健康を守ることにつながります。

大人の矯正で特に重要な歯周病管理
成人矯正では、若年者より歯周病リスクが高くなります。
加齢により、
・歯ぐきが下がっている
・骨量が減っている
・過去の治療歴が多い
・被せ物がある
など、口腔内が複雑になっているケースも多くあります。
そのため、大人の矯正では特に歯周病管理が重要になります。

歯科医院選びも重要
歯周病が気になる方は、
・歯周病検査をしっかり行う
・歯周病治療に対応している
・メインテナンス体制が整っている
・矯正と歯周病を総合的に診ている
歯科医院を選ぶことが大切です。
単に「歯並びだけ」を見るのではなく、口全体の健康を考えてくれる医院を選びましょう。

歯周病を放置したまま矯正して後悔しないために
歯科矯正は、見た目だけではなく人生の満足度にも大きく関わる治療です。
だからこそ、安全に、長く健康を維持できる形で進めることが非常に重要です。
歯周病を放置したまま矯正を始めてしまうと、
・骨吸収の進行
・歯の動揺
・歯ぐき下がり
・歯周病悪化
・歯の喪失
などの深刻な問題につながる可能性があります。

一方で、適切な歯周病治療を先に行い、管理しながら矯正を進めれば、より安全で安定した結果を目指すことができます。
「歯並びをきれいにしたい」
「健康的な口元を維持したい」
「将来も自分の歯で食事したい」
そのためには、まず歯ぐきと骨の健康を守ることが大切です。
もし現在、
「歯ぐきが気になる」
「出血がある」
「歯周病かもしれない」
「矯正したいけど不安」
という方は、まず歯科医院でしっかり検査を受けてみてください。
矯正は「歯を動かす治療」ですが、その土台となる歯ぐきと骨が健康でなければ、本当の意味で成功とは言えません。
将来の歯を守るためにも、歯周病治療と矯正治療を正しく進めていきましょう。

当院のホームページでは、歯周病治療にも治療内容を載せておりますので、あわせてご覧ください

参考文献
日本歯周病学会 歯周病患者における矯正治療のガイドライン
American Academy of Periodontology. Periodontal considerations in orthodontic treatment
Graber LW, Vanarsdall RL, Vig KWL. Orthodontics: Current Principles and Techniques
Proffit WR. Contemporary Orthodontics
Lindhe J, Lang NP. Clinical Periodontology and Implant Dentistry
日本臨床歯周病学会 歯周治療に関する資料
厚生労働省 歯科疾患実態調査
AAP-EFP Workshop Proceedings on Periodontitis and Orthodontics

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